赤ちゃんに保険をすすめられるケースが多い理由
出産準備を進めていると、「子どもが生まれたら保険に入っておくべき」というアドバイスをよく耳にします。保険の営業担当者からDMが届いたり、育児雑誌の広告でも「お子さまの万が一に備えて」というコピーが目立ちます。
この背景には、保険会社側の販売戦略もありますが、「赤ちゃんは免疫が未熟で病気になりやすい」「先天性の疾患が見つかるケースもある」という親の不安心理を刺激しやすいという面もあると思います。
ただ実際には、赤ちゃんに民間の医療保険が必要かどうかは、公的制度をきちんと理解したうえで判断すべき問題です。「なんとなく不安だから入っておこう」という気持ちだけで動くのは避けたほうがよいでしょう。
子どもの医療費が実質無料になる乳幼児医療費助成制度
まず前提として知っておきたいのが、乳幼児医療費助成制度(子ども医療費助成制度)です。これは都道府県・市区町村が実施している公的な制度で、子どもの医療費の自己負担を大幅に軽減または無料にするものです。
対象年齢や自己負担額は自治体によって異なりますが、多くの自治体では中学生・高校生まで無料または数百円程度の自己負担で医療を受けられます。
横浜市の場合
- 0歳〜小学6年生:通院・入院ともに1回あたり500円(月2回まで、3回目以降は無料)
- 中学生:通院・入院ともに1回あたり500円(同上)
- 所得制限あり(一定所得を超えると対象外になる場合も)
つまり横浜市に住む赤ちゃんが発熱や風邪で病院にかかっても、1回あたりの自己負担は500円程度です。入院が必要になった場合も、1日あたり200円の食事代を除けばほぼ無料です。民間保険の給付対象となるような入院も、公的制度でほぼカバーされるわけです。
赤ちゃんに民間医療保険が不要な根拠3つ
1. 公的医療保険+乳幼児医療費助成で自己負担がほぼゼロ
子どもも健康保険(3割負担)が適用されます。さらに乳幼児医療費助成制度を組み合わせると、多くのケースで自己負担は数百円〜数千円で収まります。民間保険の入院給付金(1日5,000円〜1万円程度)は、そもそも発動する機会がほとんどないとも言えます。
2. 子どもは大人と比べて医療費が安い傾向がある
乳幼児が受ける治療の多くは、発熱・感染症・けが等への対症療法が中心です。がん治療や生活習慣病のような高額治療は乳幼児にはほぼ発生しません。大人向けの保険と同じ感覚で「万が一の大病に備えて」と考える必要性は低いと言えます。
3. 保険料を長期にわたって払い続けるコストが軽視されがち
仮に月2,000円の子ども向け医療保険に入ったとすると、10年間で24万円の保険料になります。この期間中に実際に給付を受ける金額が保険料を上回るかどうかは、統計的には多くの場合そうはなりません。長期的に見ると、払った保険料のほうが受け取り額を大きく上回るケースがほとんどです。
保険が必要になる例外的ケース
ただし、すべての赤ちゃんに保険が不要かというと、そうとは言い切れません。一定の条件下では、民間保険を検討する意味があります。
先天性疾患が判明している場合
出生前診断や出産時の検査で先天性疾患(心疾患・ダウン症・代謝異常など)が判明している場合、治療が長期化する可能性があります。こうしたケースでは公的給付だけでは対応しきれない費用(通院交通費・長期入院時の差額ベッド代など)も想定されます。ただし、既往症がある場合は民間保険への加入自体が制限されることも多く、事前に確認が必要です。
高額の差額ベッド代・付き添い費用が発生するケース
長期入院が必要な場合、差額ベッド代や親が付き添いで仕事を休む際の収入減はカバーされません。「医療費そのもの」ではなく「入院に伴うその他の費用」への備えとして、医療保険ではなく貯蓄や収入保障保険を検討するほうが合理的な場合もあります。
学資保険は保険か貯蓄か
よく「子どもの保険」として一緒に語られる学資保険ですが、これは厳密には医療保険ではなく「教育費を目的とした貯蓄商品」です。払い込んだ保険料を元に、子どもの進学タイミング(18歳など)に合わせて教育費を受け取る仕組みです。
学資保険の特徴を整理すると以下のとおりです。
- 返戻率:100〜105%程度が一般的(元本割れする商品もある)
- 途中解約すると元本を下回るリスクがある
- 保険料払込免除特則で、契約者(親)が死亡した場合に以後の保険料が免除される
- 預貯金より若干有利な場合もあるが、NISAには大きく劣る
学資保険は「強制的に積み立てる仕組み」として機能する点は評価できますが、運用効率という観点では投資信託と比べると見劣りします。「貯蓄性の保険に入ることで教育費を確保する」という考え方は否定しませんが、NISAと比較したうえで選択することをおすすめします。
保険料を積立NISAに回す方が有利な理由
仮に学資保険または子ども向け医療保険に月1万円払うとします。これを18年間続けた場合、合計216万円の保険料になります。
一方、同じ1万円を毎月つみたてNISAで全世界株式インデックスファンドに投資した場合、年率4〜6%の複利運用が続けば18年後には約280〜370万円になる試算になります(あくまで一例であり、投資元本を保証するものではありません)。
学資保険の返戻率が105%とすると216万円→226万円。NISAで4%複利運用なら約280万円。その差は大きいと感じます。もちろん投資には元本割れリスクがあるため一概には比較できませんが、「保険に入ることで教育費を確保する」という考え方は、一度立ち止まって試算する価値があります。
私の場合:娘の保険について夫婦で話し合った結果
6月に第一子(女の子)が生まれる予定の私も、同じ問題に向き合いました。妻と話し合って、今のところ「娘の民間医療保険には加入しない」という結論を出しています。
理由は主に3つです。
- 横浜市の乳幼児医療費助成制度で、通常の医療費はほぼカバーされる見込みであること
- 私自身も医療保険・生命保険に未加入であり、公的制度と貯蓄で対応するという方針を維持したいこと
- 浮いた保険料をNISAに回して教育費の原資を作るほうが、長期的な家計改善につながると考えたこと
ただし「先天性疾患が見つかった場合はどうするか」「入院が長期化した場合の差額ベッド代はどう備えるか」という点については、娘が生まれてから実際の状況を見ながら再検討するつもりです。保険の判断は一度決めたら終わりではなく、状況の変化に応じて見直していくものだと思っています。
まとめ:赤ちゃんの保険は「不要なケースが多い」が一概には言えない
本記事の内容を整理すると以下のとおりです。
- 乳幼児医療費助成制度により、多くの自治体で子どもの医療費は実質無料または低額
- 赤ちゃんに民間医療保険が必要なケースは限られており、通常の生活では公的制度で十分カバーできる
- 学資保険は貯蓄商品として一定の機能はあるが、NISA(つみたて投資枠)と比較すると運用効率は劣る傾向
- 先天性疾患・長期入院リスクが高い場合は民間保険を検討する余地がある
- 保険料を積立投資に回すことで、教育費の準備をより効率的に進められる可能性がある
「赤ちゃんに保険は不要」と断言するつもりはありませんが、「なんとなく不安だから入っておこう」という動機だけで保険料を払い続けるのは、家計の観点からは見直す価値があります。まずは自治体の乳幼児医療費助成制度の内容を確認してから、保険加入の必要性を判断することをおすすめします。
【免責事項】本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の保険商品や金融商品の購入・加入を推奨するものではありません。保険・投資に関する判断は、個人の状況や目的によって異なります。具体的な内容については、ファイナンシャルプランナーや保険代理店などの専門家にご相談ください。投資には元本割れのリスクがあります。過去の運用実績は将来の運用成果を保証するものではありません。乳幼児医療費助成制度の内容は自治体によって異なり、制度改正により変更される場合があります。最新情報は各自治体の公式情報をご確認ください。
参考情報
赤ちゃんや子どもの医療費・保険に関する公的情報は以下をご参照ください。赤ちゃんの保険選びに迷ったときは、これらの公的情報もぜひ参考にしてください。

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